大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2582号 判決

訴外松戸実は被控訴人の実兄で北見市において海産物等の販売業をしており、商用のためしばしば清水市に来て、従来控訴人望月がその内縁の妻栗山ハマと清水市内において経営する旅館大和館を常宿として控訴人らと懇意の間柄であつたが、終戦後本件土地の所有者池上和市郎はこの土地を売却しようとし控訴人望月に対しこれが買取を求め、もし控訴人が買取らなければ他に売却するとの意向を示したので、当時右地上に建坪七坪五合(後に一二坪に増築)の建物を建築して居住していた控訴人望月及び栗山ハマらは土地が売却されれば土地を明渡さなければならなくなると思い、さりとて自分では買受ける資力もないので困つた末、右松戸実に相談したところ、同人において被控訴人の代理人として控訴人望月のあつせんによつてこれを買受けたものであること、当時右土地には控訴人望月の借地権があり、これにもとずき控訴人望月が地上に建物を所有し、かつこれに居住していたものであることは右実においても知つていたこと、その後被控訴人は本訴提起の数カ月前まで控訴人望月に対してなんら土地明渡を求めたことのなかつたことを認めうるのであるが、いつたい人の賃借している土地の所有権を譲受けるにあたつて、その賃借権もしくは地上建物について登記のあることによつて法律上当然に借地権の対抗を受ける場合は別として、そうでない場合に従来の旧土地所有者と借地人との賃貸借を承継するかどうか、もしくはあらたに賃貸借を締結するかどうかはもとより土地譲受人の自由であつて、一度び建物所有を目的とする賃借権の設定があるときはこの借地権は法律上厚い保護を受け、その反面所有権は久しきにわたつて大きな拘束を受けるものであるから、土地譲受人としてはその土地譲受の目的、従前賃貸借の内容、残存期間その他諸般の事情を検討した上これが承継をするかどうか或いはあらたに従前の借地権者と契約を取り結ぶかどうかを決するのは当然であつて、そのために土地譲受と同時に直ちに従来の借地権者に対し明渡の請求をせず、その間一時的にその使用を許すことのあり得ることは少しも怪しむに足りないところであるから、被控訴人が前記のような事情の下に本件土地所有権を取得し引続き本訴提起の数カ月前までその明渡を求めることのなかつた事実自体によつて被控訴人が右賃貸借承継の合意をしたもの、少くとも暗默の合意があつたものと解するのは相当でない。

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